皐の民

2008年11月24日 歴史物
みぎわのたみ 皐民(gaomin こうみん)
水辺の民を意味する
「皐」の字は「さつき、五月」としてよく使われる

この小説は9世紀の東アジアに忽然として現れ
滅んでいった海の王国への挽歌

彼らの活動範囲は中世の倭寇の
活動範囲とよく一致する

主人公は二人
入唐求法の旅に苦しむ
慈覚大師 円仁(えんにん)と
円仁の旅を支えた海の王者 張保皐(ちょうほこう)

ライシャワーが傾倒した円仁は
比叡山三大師のひとりで
天台密教(台密)の創始者 である。
彼がいなければ
比叡山は高野山の勢力をしのぐことはなかった。

もうひとりの主人公
9世紀の海に覇をとなえた海の王、張保皐は
おそらく弁韓(任那)の遺民であると思われる
韓国のドラマ海神(ヘシン)の
主人公 チャン・ボゴ である

著者 金重明 Kim Jung Myeong  キム チュンミョン

「保皐(みぎわ たもつ)」は中国語で
海の王国の守護神ともいうべき意味を持つ
張保皐は海の王としてこの名を名乗り
山東半島突端の赤山院を最初の
根拠地として日中韓の海を制した。
本拠地は韓国全羅道の莞島(清海鎮)。

修学院離宮に接する
京都の赤山院(赤山禅院)は
円仁の遺言によって
彼が大いに恩義を感じていた
海の民(皐民)の守護神を勧請したものである
ここは京都で最初に七福神を祭ったところでもある
ここを訪れたときは七福神が張保皐と
その麾下にあった清海鎮六驍将に
対応するのではないかという妄想にふけった。

私のよく行く八大神社の摂社にも新羅明神が祭られている。
百済、任那は新羅として統一され
張保皐をはじめとする海賊たちが活躍したのは
統一新羅時代末期だったのでこの神名があると思われる。
円仁の赤山明神と円珍の新羅明神は重なる部分もあり、違う部分もある。

余談であるが京都近辺で最も有名な新羅明神は
三井寺(園城寺)の守護神 (guardian deity) である。
足利尊氏が寄進した三井寺の新羅善神堂という神社に祭られている
純和風の本殿、ご神体の新羅明神坐像は、ともに国宝。
この寺を近畿屈指の名刹として確立した智証大師 円珍は新羅明神を非常に尊んだ。 
新羅明神坐像の容貌はモンゴル系ではない
高くて細い端正な鼻梁、極端に下がる目じりは
西域シルクロードの人というほうがよい
張保皐の娘にはペルシャ系の血が流れていたともいう
何か通じるものがあるかもしれない

美しい庭(十牛の庭)をもつ瑞巌山 圓光寺の
隣にある鷺森(さぎのもり)神社は
かつては京都赤山院の鎮守社である 
三井寺の新羅善神堂から勧請されたものらしい 


記事複製 2010-04-25
http://rekimani.seesaa.net/article/147674615.html

関連
三井寺展
http://filologos.diarynote.jp/200812071932356330/

七福神
http://filologos.diarynote.jp/200812102310374420/

日月星辰
http://filologos.diarynote.jp/200903080024509940/

廣韻検索
http://www.u-gakugei.ac.jp/~mkimura/i/
下平06豪 
皐 高也局也澤也 詩云鶴鳴九皐 

莞島
http://travel.jp.msn.com/special/overseas/korea/plan/images/map_jeolla_n.gif

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