西宮史

西宮市域の成立はきわめて複雑である。市域は武庫郡、菟原郡、有馬郡にまたがる。　中核は律令制時代の旧武庫郡廣田郷である。

当時の武庫郡は武庫川の両岸を領域としていた。　現在の尼崎市大庄（おおしょう、大島庄）は武庫郡の最重要地域のひとつである。武庫之荘の地名も武庫郡武庫郷に由来するらしい。　

平安初期の武庫郡は賀美、児屋（昆陽）、武庫、石井、曾彌、津門（つと）、廣田、雄田の8郷で構成されていた。　この中で曾彌（曽根）が鳴尾にあたる。

現在の昆陽池から夙川が武庫郡ということであり、郷の半数は武庫川より東、つまり尼崎市である。

明治以後の武庫郡は菟原（うはら）、八部（やたべ）両郡を吸収して西のほうに延びる。東は大庄村から、摂津・播磨の国境にまで達する大武庫郡の成立である。　西端は三木市の文化圏に属し、千年家がある山田川流域。　1920年までは現在の神戸市須磨区も武庫郡須磨町と表記された。　

菟原郡は明治以前の旧郡で、西宮市の夙川流域、芦屋市、神戸市東灘区を中心とする。
いわゆる阪神間の高級住宅地の主要な領域と重なる。　　西端は生田川。　かつての神戸市葺合区（神戸市中央区東部）である。

夙川が武庫、菟原の境界にあたるが、中世以前の夙川は東に流れて越水の岡の南で広大な武庫の入り江に注いでいた。　　当時の、このあたりの風景は現在の天橋立に近いと思われる。http://vivimus.net/memo/blosxom.cgi/Nishinomiya/upto12c.html (英文)

入り江の入り口が津門である。　この地名は古代の武庫湊が入り江にあったことを暗示する。　　西宮戎は夙川と海波によって形成された砂州（角の松原）の上にあった。　

http://freki.exblog.jp/7764271

戦国期における西宮の政治の中心は越水城である。　　城は三好氏の近畿支配の拠点であり、宣教師（ガスパル・ヴィレラ、ルイス・フロイス）や室町将軍が訪問したこともあるらしい。　城には天守閣があったという説もある。　地元の美酒佳肴を集め、風光を愛でながら宴が催されたことであろう。　ここは古来の歌枕の地「御前の浜」でもある。　入り江の絶景は失われていたにせよ、現在でも高級住宅地として有名な高台からの山と海の眺めは結構なものがあったはずである。

http://filologos.diarynote.jp/200803250639530000

札場筋も、このころ城と経済の中心である戎社門前町を結ぶため湿地帯を横切って築かれた。　　　最初は、細い土手道 (Causeway)であったと思われる。

戎社の門前町については応安4年(1397)　西宮大火　家屋焼失800軒　吉田家日次記
という記録がある。　戎社は古くから上級貴族の邸にも匹敵する練塀をめぐらしていたともいわれ、町の経済力の強大さがうかがえる。

江戸時代において、西宮町が大発展したのは宝暦の酒勝手造り令(1754)以降である。　　それ以前の西宮は尼崎藩領であった。　西宮を含む灘筋の村々が尼崎藩領から幕府直轄となったのは明和6年(1769)。　　これ以降、灘五郷は江戸の巨大マーケットと直結して高度成長し先進的な酒造工業地帯を形成する。